ドリー夢小説
目の前に横たわる白き鎧に点々
と血が付いているのが分かる


大きな大樹の前に
寄りかかり漆黒の空に写る星々を見つめていた
もう剣を握る力はとうに無かった
只、茫然に夜を眺めるだけ







ホタル








大樹の周りには白狼軍の
兵士が無惨な姿で倒れている。
それは二度と大地を踏みしめることはないだろう


消えない罪
荒がえない過去
全てが縛られる

セイス達はそんなルカの前にただ立ち尽くしていた
その周りでは罠として使われた蛍が舞っている




「………」




誰もが無言で、誰もが動こうとしなかった
しかし一人が言葉無きまま前に出る


っ…!」




誰かが声を上げたが
聞かぬままルカに近付く
動かず、ただ夜を見上げている彼に


ルカの周りには土に染み込んだ
黒い血が広がっていた



『………』



ルカの目の前で膝をおり彼の視線と同じようにする
すっとする気配にルカが重たく瞼を上げる
これが大地を怖がらせた狂皇なのだろうか?



か…」



目に入ったのは夜と同じ漆黒の髪



『ルカ…』


「…分からない…」


『え…?』


「俺には分からない…何故お前が今そんな顔をしているか…」



は自分の頬に触れてみる
そこで初めて分かった自然に涙を流していたことを


頬を伝い、一本の線が出来る
白く、透明の筋




「…何故泣く…」



何故お前が涙を流す?
それが俺には分からない…




『ごめん…』




ただ。
ただそれだけを言っては再び線を作った



『貴方を…止めることが出来なくて…』



声は震えていた

ルカは戦場位でしかを見ることはなかった
"黒き狼"と呼ばれている。
漆黒の髪は戦場を駆けまるで

狼のようなことが名の由来
そんなが泣いている…
自分に詫びている…




『ルカを止めたかった…でも…』



止めることは出来なかった
そして今に至る



「俺を止めることは出来ぬ…誰も。俺さえも…」



そう言い、一息吐く



『せめて…貴方の気持だけ…』



はルカの手を取り自分の頬へと移動させる
そこからは未だ雫が落ちていた




「…気持…か…」




そっと呟く
今にも、消えてしまいそうな程儚い



…」




ルカの手が彼女の雫を優しく掬う




「…今の俺は初めてお前と会った俺とは何かが変わったか…?」




何故自分でその様な質問をしたのか分からなかった






『…変わらないよ』






『何も変わっていない…よ…ルカは、ルカだから…』



目尻に涙を溜めたまま崩さない笑顔をつくる
それが今必要なことだと思ったから




「…そうか…そうだな…」





空に蛍が舞い、辺りが明るい
その横にはがいる




ただ…
ただそれだけで良かったのかもしれない



『ルカ…』



既にその言葉に返事はない




『貴方の死は、貴方の為でもあり…

この地の為でもあった…』





それなのに何故だろう

自分の中ではその理由で納得していない





ただ周りには





貴方が残した








ホタルだけ








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