ドリー夢小説


『風邪ね』


「………」



体温計を見て彼女は少し溜息を吐いた

その目の前には
熱を出してダウンしていた僕の姿












暖かい手を











此処最近寒い日が続いていた
確かに冬に近づいても居るし、冷たい風も吹く様になり
冬の訪れを己の身体で実感も出来る


けれどまさか風邪を引くなんて思っても居なくて
服などの防寒対策も特にしていなかった



その結果がこれだ





『はぁ〜…だからあんなに寒くないようにしてっていったのに』





ベットの隣に洗面器を置き、タオルを絞る
洗面器からは湯気が沸きあがっている
なんてことを布団を被りながら虚ろな瞳で見ていた


頭が痛くて
喉が痛い、声もかすれている
完璧な風邪の症状





『聞いてる、ルック?』


「聞いてる…聞いてるからあんまり大きな声出さないでよ」





少しの声でも頭に響くのが衝撃で分かった
頭の芯から痛くなるような感じ

扉の外ではセラが不安そうに眺めているのがチラリと見えた



の手が僕の額にタオルを乗せる
お湯で絞ったタオルは少しだけ気持ちよくて楽な感じになった

洗面器を持ち、立ち上がると共に




『少しは安静に寝ていてね』


「…分かってる…』



精一杯の声で僕は彼女の背に声を投げた
その後の意識は覚えていない

瞼が重く感じ、瞳が熱い
深い、深い睡魔に飲み込まれていった











「…大丈夫ですか?ルック様…」


『大丈夫よ。熱が少しあるけど…安静に寝ていれば直るわ』


「ごめんなさい…お役に立てなくて…」


『貴女は体が弱いから…うつっちゃうと大変だから…ね。そんな顔しないで?』







『ルックなら大丈夫よ、だからセラ。ルックが早く直るように祈っていてね』


「…はいっ…」









  *    *    *    *    *






水の音
ピチャリと、雫が落ちる音

重い瞼を開くと、隣にはが洗面器に新たなお湯をはりタオルを絞る姿が見えた
腕まくりをして、長い髪の毛を一つにしばっている





「……………?」


『あ…ごめん。起こしちゃった?』



頬が厚いと感じた
それと同時に、安心感も

風邪を引いた時…僕の隣には誰が居た?
そう記憶の糸を引っ張ってもその姿は思い出せなかった

その場所には誰も居なかったのだから




「……風邪なんて引くのは何年振りだろう…」



額に乗っているタオルに触れ、火照りさを少しでも抑える
自分でも覚えていないほど長く引いていない様に感じる




「…嫌なことを思い出すな…」


『…ルック…?』



少し怪訝そうな顔をおし、覗き込む
流れる様な銀色の髪が眩しかった




何時も一人だった
風邪を引いた時も、誰にも手を伸ばすことも無く
只一人で咳き込むだけ

否、違う
手を伸ばしても、返してくれない事を知っていたから
手を握ってくれる筈も無いと、分かっていたから

敢えて手を伸ばさなかったのだ


恐れていた
一人だということを確信することが




「何でもない……」



風邪を引くとどうしても嫌な事ばかりしか思い出さない
そんな自分に自己嫌悪だ




「少し眠るよ…」



そういった瞬間、自分の手の平に暖かい物が触れた
暖かくて、鼓動を打っている君の手



「……?」


『…昔から風邪を引くと気が弱くなるって言うからね』




だからずっと手を握っていてあげる





その一言だけで
救われると思える僕は、調子良いのかな


只手を握っているだけなのに、何故もこんなに



落着くのだろう





「…今度は君が風邪を引くよ…」


『あら、その時はルックが看病してくれるんでしょ?』



手を握ったまま、微笑んだ君
その笑顔が温かかった

温もりを与えてくれた



「何でそうなるかな…」


『ギブ&テイクよ』







再び瞼を落とす
瞳を閉じる前に見た君の笑顔が


僕の記憶を打ち消した
手に残るのは




暖かい記憶









end


2004/11/27

久々幻水夢更新(汗
駄目駄目管理人でスミマセ(吐血



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